デニムブルー・ママン15の15

 浜の町の楽器店にピアノピースを調達に行き、これなんかいい楽曲かもな?って容子が自分で選択肢をふる活用して持ってきた楽譜に子犬のワルツや乙女の祈りがあって銀波も・・・この銀波をあたしが気に入って何回もリクエストをしていた関係で容子自身この曲はネバっこくてそこまで好きではないにしろ母親が喜ぶなら・・・を想定しながらサービス演奏をしてくれていた。しかし私はあるとき容子のどす黒い思惑を知るきっかけを掴むのです。教室に好きな男子が居てその子達が、ワイワイ言いながら自分の家のすぐ近い場所を横切って塾にいく。ロコちゃんちの前。夜ですから声が響く。中3といえば青春のまっただなか。どういうわけかその生徒たちが通過する時間帯のちょっと前に銀波を弾き始めるです。男の子は容子の家がそこだとわかっています。地元では教育一家で名高い家。知らない者はありません。銀波は主題を替えながら幾通りにもメロディーが分かれてサビを迎えて行きます。私はこの曲を父親である脇田大佐に見立てて聞いていたのですが、まだ、娘には話しません。どんな父親だったか?温厚でいつも家の中では微笑むだけの父親。いかめしさも全く出ない。私は生まれすぐで可愛い盛りだったのでしょう。膝に乗っけてもらい一緒に御飯を食べていた記憶があったのです。容子は好きな男子生徒にピアノを弾き彼らが聞いている・・・とそう思うだけで満足だったようです。なぜ、自分が好きな傾向の楽曲ではないのに弾ける?それが女性の特権と進化だと思うのです。