デニム・ブルーママン17の2


 もしも音楽がないのなら、容子の心は消沈したままだったでしょう。しかし幸いなことに高校に入ってすぐ好きな男子がクラスに出来る。最初4月の段階で好きになった男子はいたにはいたのですが、そのあとに好きになった男子は遠くにある島、壱岐から来ていたことで興味が湧いた容子だったようです。島の匂いが自分の田舎者と合致するのでは?という淡い期待。しかし俊英の彼はクラスで常に一位か二位。遠い存在に思える心を叱咤激励して、彼のいる教室へ足を運んだのです。その頃は建て替えの時期だったのでしょう。教室でも外の靴を履いていたようでもともと無理して滑り込みセーフで入り込んだエリートクラスは、容子にとってよそよそしい雰囲気があった・・・。世知辛かったでしょう。しかし田舎者には田舎者の発奮もあったのです。

 中学でもその気質が顕著で、豪放磊落な生徒、その人物が同じクラスで一緒だった為に救われた気分でもあったのです。トンネルから向こうの東長崎地区はまるでど田舎の象徴でそれがあったにも関わらず、彼の豪快なトーンが、クラスには地響きのように鳴り響いていて、しかし容子は相変わらず切なかったと言えます。一学期の末の期末考査で赤点を四枚も食らってしまい早速転校を示唆されて、担任にこう質問されるのです。成績を上げる自信はあるのか??って。そんなもの、あるわけない。容子は黙っているしかない自分がふがいなかったでしょう。しかし自信はないのにある・・とは言えなかったのです。