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 邪魔が入ると執筆は妨げを受け一時中断せざるをえず、僕はそういう事態に追い込まれない点で恵まれる。ホテルの一室に缶詰めになって仕事をこなす小説家のエッセーを読むたびに、僕は不審に思ったものだ。自分の家で書けばいいのに?って。しかし年を重ねるごとに僕にもその辺の事情が理解出来るようになってきた。本当に邪魔は入るのだ。最も顕著な邪魔は家族である。それは必然の顔をして強引にこっちの陣地に攻め込んで来る。子供が熱があるのよ、一緒に来て!!とか、今日はまとめ買いをするから手伝ってとか。僕はそういった誘いが一切ない身分を得ている。それが快挙だと心底思える。家族がいて僕が幸せだなあって感じることは、これまでの人生で母を除いてはなかった。他の誰かで、母と取って替われるような人物は現れなかった。好きだな!!とか僕にも結婚のチャンスが来ている?っていうのは五十代になる前まではあった。感情がその頃まで僕にはあった証明だろう。しかし・・・今の僕にあるのは余命をきちんと生きること。それしかない。僕の気持ちをみんなに吐露して何が世の中変わるもんか!!って高を括っている人々ばかりだろう。そこを僕もわかっている。わかってはいてもこうして僕は自分の気持ちを吐露する。僕が居るのは最低ランクだ。今日をどうにかこうにか潜り抜けようとの、生きとし生ける者のブログだ。生活とのサバイバルに明け暮れ勝利したと言えるのは、明日まで命を長らえた時。こういう切羽詰まった次元がいいのかもしれない。