Ss143

 幼稚園バスがこっちに走って来ている風景が僕は怖かった。自分がそこで一時期、拘束されるのは最初から観念していた。僕は二年保育だった。他の子供達が三年を選ぼうかという時にも母は専業主婦だったことで幼稚園も最初一年でもいいのでは?と疑心暗鬼だった。僕を含め周囲にも分かっていた観測は立つ。この子は集団生活が果たして可能なのか?のはてなが付いた。しかし二年の線を親は選ぶ。頭の中で一年の二倍だということがしっかり自分の中で理解が出来ていたから、なお、しんどかった。不用意で何か特別な希望も同時にあった。友達が出来る?もしもそうだとすれば、この二年も苦にはならないし、期待するべきかも?って僕にしては物凄い向上心の元、幼稚園に行き始める。しかし園バスが見えて来ると僕は決まって、おしっこ!!と言って母を困らせる。ちょっと木陰に隠れれば僕を見落して園バスが出発してくれるのではないか?そこでの期待感がずっとあって、僕は母と一緒におしっこに走る。嫌だねえ?この子はと言いつつも母はバスに間に合うように僕の尻を叩き、園バスに無理でも乗せようとする。僕はそういう軋轢を幼少の頃から経験し、個々を難易度によってランク分けもして来た。みんなの前で発表も嬉しくなかった。出来れば寡黙のカテゴリに収まっていたかったタイプだ。僕の気性に姉は似ている。姉も自分からしゃしゃり出てどうこうは好まない。しかしその姉が変貌を遂げたのだ。