ブラックオニキス・マン159

 やっとのことで、リビングを大掃除して、スイッチを入れても、エアコンが稼働しなかったときの母と姉の落胆が僕の目に浮かぶ。ふたりは似たもの夫婦以上にコミカルだ。二年以上もエアコンのフィルターをいじってなくて、ツカないのは当然だろう。しかし期待して掃除した分、15畳のリビングは広くなって清々しいはず・・・それなのに、なんで、嘘をついたのか?って姉が母に食って掛かって来たというから、掃除さえすれば、本当にエアコンが復活すると二人は見込んでいたのだろう。五年ぶりにフロアも掃除をして、一週間掛けて、ゴミ袋十個以上を出して、フィルターは母がテレビ台に登って取り外し、綺麗に歯ブラシで洗ったという。しかしウンともスンとも言わない。稼働しない。このときの落胆が僕の眼に浮かぶ。さぼっている人間は自分のかいた汗が憎らしい。こんなことなら、掃除なんかしなかった。なんの為に掃除したか?意味不明。責任獲ってよ!?って、誰かに責任転嫁したい激しい性向も伺える。僕らは母とは速い時期に離別して自分の城を持ったから救われた。

 それを思うと姉も被害者だった?・・・その可能性は否めない。アーティストは自分の作品が子供だという。常日頃、そこを強調し、子どもたちと同じレーンを決して歩まなかった母のユイツの理解者が姉だった可能性が若干は・・・ある。親父は日本一のお母さんだ!!って母のことを褒め称えて亡くなったが、あれは名役者の演技だったのか?それとも親父なりの別個の視点があったのか?どちらかなのか、今となってはわからない。まだ、答えは出ない。