サファイア・マン《緻密な男編》〔8〕二期二会こそがキャロルの定番・・・。そのことに気が付いたのは、マックスロードで、短大のときのクラスメイトに遭遇したとき、もうこれは間違いないと思ったのです。彼女はキャロルと同じ一時期に学校から姿を消すものの、その大きなあいくるしいヒトミをキャロルが忘れるわけがありません。カウンターの中で、会って、すぐに挨拶しますが、彼女はことの他クールでした。店の看板娘は別にいましたが、それよりも彼女が持つスターの要素にキャロルが目を奪われて、東京ララバイという彼女の持ち歌を自分のものにしようと頑張りますが、どうも巧くいきません。キャロルはその店の前にアパートを借りていたことと、すぐ近くに短大の親友里子ちゃんが棲んでいたことがこの店を受けた理由でした。このバイトで、カウンター越しの商売の基本を習おうとしたのです。すぐに野母崎出身のタンカーに乗る船員からプロポーズされて、彼が下船する頃には、プロポーズを受ける積もりでいたのですが、それを木っ端微塵にしてしまったのが前夫だったのです。船員の妻になることにキャロルが邁進したのはカオパスの男でしかも寡黙。なんていうカッコいい男。若き日の渡瀬恒彦だったのです。お土産を一杯両手に抱えてカウンターへ。ボックスは形だけ、二個ありましたが、なんといっても華のあるカウンター。誰もがそこへ座ります。そのお土産は受け取るな!!と命令を受けるものの、どうしても中身が気になります。やつは前夫は見張っていました。