アクアマリン・マン

 僕は自分の結婚を後悔なんかはしていない。結婚は、熟慮を重ね、決定したし、容子の性格には、若干の不備は認められたものの、それを上回る長所があった。陽転思考だ。来たるべき難関に対してとことん悩み、凹むが、翌日にはきれいサッパリ忘れてる…くよくよしていたのは誰だ?と言いたいくらい、他力本願なのだ。僕は悲観主義者の傾向は顕著だった。加えて、劣等感の塊。人と競えるのは、仕事の領域のみと、限定されていたからこそ、バンカーに打ち込めた。細く長くの精神はすこぶる大事だ。太く短くに僕は憧れ、畳の上では死にたくはなかったが、よく鑑みると、ほぼみんな、病室で息を引き取る。望まなくとも、畳の上ではなかったのだ。