エメラルド・ウーマン57

 明日は誕生日の容子。66歳になります。私は自分のその頃を思い出して悠々自適の確約を持つあの時分をしたたかに思い出していたのです。容子が今、手持ち百円ないのに対して私には同じ時期、40年勤務した功労の退職金が控えていた。思えば二回目の結婚でようやく、結婚の意味が分かった私は、この経験を世の中で活かせたらな?を思わずにいられない。自分のことだけを考える独身時代にはない窮屈な生活こそが結婚の相対論。アインシュタインの言い方を真似ているのも、それが似つかわしいからです。自分が考えるように、相手が動くならすでにかかあ天下の以心伝心夫婦。しかし、絶えず自分が正しいを主張する相手に、くみせざるを得ないのなら、亭主関白で妻側のストレス噴出は半端ない。私の二回目の伴侶は後者でした。主義主張が常にはっきりしていた。己のプライドを傷つけられようものなら、びんたも辞さない。私の50歳から70歳まで添い、お弁当を作り大村ボートにも通いました。相手には車の免許はありましたがバイクが好きで車庫もなかった。車が通らない小さな路地を歩いた先に建つ青い屋根の一軒家でした。私達はバスに揺られて大村ボートに通ったのです。今となっては一番佳い思い出になったから人生は分かりません。