エメラルド・ウーマン6

 明治、大正、昭和、この暦の三段重ねの中でも、弟の生まれた大正12年、1923年は関東大震災が起こった災難年でした。兵力がじり貧になって若者は全員戦争に駆り出される。その年齢は16歳から24歳。もちろんそれより上の方達も同じく災難は変わりない。1920年から1928年生まれは大惨事世代。弟に赤紙が来たのは21歳、女子は戦地には行かず済むとはいえ、国民は最低限度の生活を強いられ苦境に喘いていたのです。先の全く見えない戦争。大正13年から昭和3年生まれの男子の苦難はさらなる苛烈を極め思い返しても理不尽極まりない。もう、二度とは味わいたくはない国難だったことは言える。私はそういう意味合いも込めながら、容子を傍から見つめてきた積りです。執筆に至る動機がこれほど揃う例は希だと思ったのです。