エメラルド・ウーマン2

 当時は男子は常に戦争を意識していました。私の父が1942年9月に他界して、金銭的にいきなり私たち一家が貧乏のどん底に落ちて行った訳ではないのて、説明しておきましょう。主に母の和裁の収入に頼って生活していたのです。父には絵師として、並々ならぬ才能があると、母も私たち姉妹も信じてはいたのですが商売はまた、別もの。母の得意は袴でした。精魂込めてそれを縫うとき、母の眼は血走っていたこと…。貧乏ではあるけど母には注文が入ってきていた。しかし、父がそれを見ながら、不甲斐ない思いでいたことは想像の範疇です。戦争は日増しに激しくなり、やがて、弟にも、赤紙がくるのです。