デニム・ブルー・サファイアママン3の18

 戦後をようやく潜り抜けようかとする国民の暮らしはまだまだ貧しくて、私も経済観念を夫に付けさせたい気持ちでいっぱいだったのに、それを見事スルーされます。そしてあろうことか、勢いよく語るのです。自分が働いて得たお金を全部没収なら夫は気概を無くすし、仕事への向上心も掴みかねる・・・私は反発します。何を言ってるの?あなたがずっと家計を受け持ってたら、借財はいつか貯まって行く。貯金ではなく借財が・・・と言い掛け前を見るともういません。中山さんのところへ出掛けたのです。住吉で囲碁教室を営んでいたのです。本当に肝心な論戦になると逃げてしまう・・・私はじっと二人の口論を伺う容子の不安そうな顔を見てはっとして我に返る。子供が怯えているはずなのにじっと言葉を聞き取り、整理している。言葉を凝視しながら頭の中で分析が開始している。母の自分がどう反応していいのか初めて迷うのです。容子!!どうしたの?容子!!いいのよ、お父さんが全然大丈夫なこと、解ったから。容子の心は私に透けて見えていたのです。しぶとくてしかも防衛本能を戦地で学んだ父親の別の強さを容子は噛み締めていたのです。碁が一体なんだっての?わたし達の日本は思想さえ失って今あるのに・・・でも夫は抜け目ない一面もあったのです。遊ぶ余裕はそれを示していたのです。