yd1060

 突如として父は言い始める。頭の中に飛来した言葉があるのだろう。しかしそれを言いつつ、なんか自分でも違うな・・・って戸惑いが生じるのか言うのを止める。例えば蛍光灯だ。病室の長い蛍光灯が父の前面高くに見えるのを、父は以前の職場だと勘違い。仕事の話をいきなり切り出してくる。どこどこの案件はどうなったか?とか。僕も想像の範疇だがこういう脳ミソの解析は出来ないだろうか。父はほぼ人生を仕事に没頭したという事実だ。時間そのものが濃厚だったのだろう。そこに影響を与える家庭そのものが希薄。しかしそれは素晴らしいこと。企業戦士だった誇りにも充当する。全く有休も獲らずにただただ会社の為に這いつくばった。僕にはそういうことは理解が出来るとしても自分は出来ない。悲しいかな僕には不可能と強く思う。これは決して拒否する気持ちから来てはいない。こんな人生は今の父の年代の方なら大勢いらっしゃるだろう。父の、身を粉にしてまで働いた時間を僕達は無駄には出来ないって強く思う。それが元本になければ何をやってもあぶはち獲らず!!という結論になる。企業戦士のいた時代は今はすでに時代劇のような扱いかもしれないが僕等は再現する。父のいいところを残し、欠点を是正する。経済的にまだ日本は立ち直れる。その基盤と厚遇が僕には既に見えている。