ss329

 自分の旦那が生きていない、亡くなってしまっているのに僕に何の報告もして来ない姉。この感性だろうか。実社会を生きてはいないみたいに僕を扱っているようで実は違う。姉は僕を心の底から弟だと思うからこそ言ってこなかったと思う。第一僕には隠しごとがある。土地を担保にお金を借りているんだよ?っとは言ったもののこれも違っていた。姉を心配させるだけ心配させ、迷子にすることが、僕の目的で果たしてそれを知って相手はどういう行動に出るのか?そこを突き留めたかった。僕は姉の想像力の餌食になんかならない。その為に、ひ・み・つを大事にする。もしも公証人を中に入れて父が遺言書を書いていたなら僕の人生も変わっただろう。姉に家も土地も全部を相続させる・・・しかし最期の最期、父は僕を獲った。優先したとも言っていい。公証人不在の文書を姉と姉の伴侶に丁重に託した。僕の存在を先に立てた証明だろう。愚かな父だと僕は言えない。そこまで来て僕は初めて父からの愛を感じ取る。遅いかもしれないが僕はこの土地を担保に入れればどうなるか?位は知っている。それをする時は親父の存在をまっこう否定するときだろう。親子のえにしを父は僕に直で問い質したかったのだろう。僕の生きざまは父の死後、一変した。現金で暮らす、贅沢をしない、質素で健康に生きる、すべてのものに愛情を注ぐ・・・姉にもきっとおいおい解って来る。死者が生前、言いたかったことはすぐに表には現れない。だからこそ価値がある。