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 大胆な生き方を選べない。だから僕に家族は必要なかった。これはもてなかった男の言い訳と採ってもらって構わない。実際、人間的魅力があればどんな彼女だって出来る。人生では思わぬ出会いがあるからだ。僕が符合論に加担出来るのも数奇の運命を姉と共有しているからだろう。何しろ姉は四歳から五歳にかけて人生の大転換を迎えている。腹を立てて自分の手で友達に怪我をさせている。この事件の発端になったのが寂しさから来たことを両親に打ち明けて、自分の道を開通させている。弟か妹がいれば私は友達に悪さすることはなかったんだよ?って。泣いて訴えた。両親はそのまま額面通りに受け取って、僕が生まれたという訳で、みんなもそこを疑問に思うだろう。誰が運命の糸を引くのか?という設問だ。すべてが姉の頭脳と口から端を発している。そして運命が姉の言う通りにじかに動くのだ。僕はこういう凄い姉を持ったことをつい最近まで全く知らずに来ていた。姉のどこが凄いのか?に及んだことはなく、身体を鍛え老いから脱却出来ている自分を確かめることのみが日々のサイクルだった。しかし思想と言う枠組みを考える。もしも僕が姉の弟でなかったなら全く人生は違うものを選べたという実感がある。っということは姉に関わったらすべての主導権を握られるという証明でもある。