成功する必要が全く無くなったって姉は面白いことを吐露する。僕はサクセスが姉の第一番目にいつもあったから一体どういう変化が姉に起ったのか?興味しんしんだった。サクセスを諦めたのかそれとも?一体何が根底にあるのか?それが知りたく姉に訊く。なんで成功を視野に入れなくなったの?彼女は屈託のない笑みで僕を見つめる。なんでってねえ、それは私にも分からない。宝くじにこれから当たるっていう人間には当たる予感ってないでしょ?これから当たりますなんかを話す?ああ、それは言える。宝くじは突然当たる。僕はいいように姉に翻弄されて結局本心を聞き出すまでには至らない。しかし僕はやはり同じ遺伝子を分けた姉と弟だ。すっかり姉は開き直っている。これまでの夫というしがらみから解き放たれて新しい軸の上にある。私がサクセスをあそこまで追及したのも、夫がいたからよ。彼を喜ばせたかった・・・。でもその夫はもはや現世にはいない。彼が天国に行ったあと、何を成し得ても、それが報告でしかないことは明らか。もうサクセス追及は終わったのよ。僕は無性にくやしかった。両親にも伯母にもそして夫にも快挙を伝えられなかった姉...。憔悴とは若干類が異なるだろう。成功を求めない人生の方が私には見合っている。姉は別れ際僕に語った。僕と同じスタートラインに姉がいることは事実。それが分かって途端に嬉しくなった。