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 僕が自分の苦い経験を生かさない訳がない。お金には至極慎重だ。僕が融資を受けた内訳を話さないのも姉の伴侶を慮るからだ。金融業の決め手は速さと内密。この二つの両輪がないと金融業でトップに踊り出ることは不可能だろう。だということは姉の伴侶、義兄に僕は一目置いているということ。不正をすぐに見抜くし、それより姉のあざとい手腕が勝ってしまいここまでの貧乏を極めている。そういう家庭は多い。例えば夫婦仲良く愛和している家庭には一寸の無駄もないが、ほぼ無駄だらけなのなら結婚は衰亡を辿る。だから僕は結婚を回避したはある。僕の憧れはアズマックスで自分の感性で家の中を工夫しながら家具や釣りベッドを設置ングしている姿に男の甲斐性を禁じえない。若者や中年の憧れをすべて彼は体現している。しかも高いと思っていた釣りベッドは三万円との工作費用聞いて僕も大工仕事は手掛けるのでいつか挑戦してみたい。彼の柔軟性ある言葉は為になる。金持ちにも色々あるけど彼の場合はお父さんの影響だろうか、いつでも下がっていく危険性を察知している。御勤め人の強さを彼は熟知しているのだ。蟻ときりぎりすでお勤め人こそ蟻だろう。小さいから踏まれないし働き者だ。しかし目立つのはキリギリスだ。まるで芸のこやしになるかのごとく背中は華奢だ。いつ潰されるかもわからないキリギリスだからこそ、大衆は愛する対象に選んでしまう。