Ss113

 世間と足並みをあえて揃えず、僕のプリズムは動いている。それでよしと言える状況内に入って来ていることがフリーエージェント張りの幸福感に繋がっている。これまで僕は自分の弱点を知りつつも、修正して来なかった。世の中が僕に照準を合わせるべきとずっと思ってきたしそれを待って来た。ここに来て僕は、ようやく僕自身のフリーエージェントを切り盛り出来る段階を獲得した。作家は投手と同じ身分だ!!と僕がはっきり読めた瞬間があった。それはあの時....思い返せばまだ、随分僕が若い時期だった。剛腕投手が出て来ればそのチームは難なく勝てる。投手戦で推移するからだ。しかし肝心の相手に利する一点を、どこから持って来るかが見当もつかなかった。投手が力投すれば必ず、仲間は打ってくれるの線を、投手の僕は望まない。打戦の援護を視野に入れず戦っていく気迫こそが作家の本領だと思っていたからだ。投手はどんどん体力的に消耗してもう一球も投げられないっていう風体に陥って行くがどうだろう?作家の場合、時間が経てば経つほど立ち上がっていくのだ。最高潮をゲットしていく。チームはもはや迷わない。この投手の為に打点は叩けなくとも、相手投手がどんどんミスをする。こっちはフォアボールで出て行き満塁になる。そして押し出しの一点だ。バットはペン、ボールは言葉となる文字。作家の思いは常にフィールドで確定されていく。