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 夜の七時前に主治医が病室に現れて、説明をしてくれます。頭のいい先生です。四月七日の肺の様子と今日の肺の様子を比較する為に両方コピーし病室に持参、あと十日もすれば全快に向かうのでは?って言われ、私は嬉しさでびっくりするのです。肺の完治は誰もが難しいとか、肺は治らない病気なのよ?って口々に言うけど、それを鵜呑みにしてもはやダメかも?って連想していた自分と伴侶は、当然ウキウキしてしまいます。本当に完全復帰?って。酸素の機械はレンタルしないといけないかもしれないけど、それすら半分の量に減っているという今日。私は一瞬でも先生やスタッフたちがゴールデンウィークを利用して、海外に行くのでは?と嫉妬を抱いていたことを悔いたのです。私はそういう経験がない。伴侶は、可哀想な人間だよな?って私を繁々と見つめながら、OLを何年かしていれば容子の人生も全く違ったものになっただろうに?って勝手なセリフで応酬する。私はしかし、怒るには至らないのです。人生百年の時代に自分が何をリセットしないといけないか、よく解った、そのことが嬉しいのです。どんなに稼いでもザルではダメ。不健康でもダメ。人生百年時代にシフトを揃えるには、倹約志向であることは第一なのです。28歳の時にオーナーが私を招きスナックで支店長とチークダンスを踊った。あたしの心は返済出来る!!って鬼の首を獲ったみたいに、はっちゃけますが糠喜び。それは、後から分かったんですが、私の勘違いだったのです。