Ss86

 僕が辛気臭いことを吐いたとしても誰もがスルーでその点でも僕は爽快感に満たされる。誰も僕の言ったことに注目もなければ留意もない。このことが僕を開放感に導く。なぜなら、注目されている人物たちの発言なりを回覧させてもらっても特別なものは見当たらない。むしろ僕の方に照りがある。この事実に気が付いている僕と、僕の以下同文の者たちこそが、将来を約束された者たちだと言えるだろう。世の基準に則っていれば御の字だと思いたいけど、そうじゃない世界が僕達の憂鬱を吹っ飛ばす。なぜなら、試練に耐えて堪え忍んで僕達の今は視界に開けている。その人生のサバンナでライオンと呼ばれる強者は本当に強者と言い切ることが出来るのか?僕は甚だ難しくなっているなを確認する。おとついだったが、ライオンから上手く逃げる水牛がテレビ画面に現れて僕の脳を刺激した。ライオンは水に弱い。その弱点を利用して、沼におびき寄せて、結果、ライオン達は諦めに似た恨めしさで、水牛の前から去っていく。どんな生き物にもある苦手意識が、人間の社会にも立ちはだかっている。僕はそれを勘ぐることに掛けては天才肌だと自分で思っている。僕を心底怖がる連中はライオンにあるはずの、たてがみすら使おうとはせずただただ、僕の出番が来ることが金輪際無いならいいのになあ....を願っている。僕はこのたてがみを、ちょきんと切ることさえ、決して今は難しくはない。百獣の王ライオンという言葉を死語にしない為にも、僕は丁重にたてがみをちょん切ろうと思っている。