スノーサファイア・マンss7 子供が出来ないからと前の嫁にお暇を出したことを後から知って後妻に入った母親の苦悩も分からないではない。僕も女性なら嫌だっただろうと思う。しかし悪びれる様子も見せずそういうことは当たり前なタヤの物腰に、母親は挑戦していたのかもしれない。貴女は女性の敵だわ!!って。しかしそれを一生、誰にも話さずに心に閉まって、態度で見事にタヤへの離反を表明したこの嫁を夫は取り押さえることが出来ずにただただ、二人の間に入ってもめごとの度に仲裁し、ある時に、お互いが全く干渉をしないのなら上と下。二階と一階でどうにか生活を継続していくことは可能かも?って両者が悟ったのだろう。タヤもしぶしぶそれを呑むしかなかった。前みたいに自分の作ったニガ瓜の味噌炒めも二階に持って行かないようになった。同じように苦しんだのは、子供である姉と弟だったろう。嫁と姑のいかんともし難い、戦いに、同席しなければならなかった、殺伐と不快感。しかしやはり親に同調しなければ子供は生きてはいけまい。タヤははっきり思ったはずだ。素晴らしい明治時代の気風をこの孫達に伝えたい。たとえ、戦争に負けはしても、そういう流儀は堅く残っているのに、自分はそれを伝えることさえ出来ない。この時の憔悴はいか程かを僕は推察する。ただ単に辛いを通り越した、情けなさ、ふがいない思いだっただろう....と。