スノーサファイア・マンss8 僕はこの姉と弟の幼少期を見る限り、しっかり明治時代の教育について行けるだけの資質は持っていたと思う。しかし運命がそれを許さなかったのだ。母親は是が非でも脱却しなければならなかった軍国主義だったし、それによって亡くなった民間の人々のことを思えば、死んでも死にきれない位の責任を背負っていた。なぜ、一少女がそこまで追い込められるか?というとちょうど思春期だったことが起因する。軍国主義は終焉しそれと同時に封建的世界も去って行った。娘は父親を封印する。駆逐艦のエースだった脇田大佐だ。物静かでいつも家庭では凡庸だった父親は戦争の生贄になったのだ。海軍も陸軍も滅亡しそこに新しいアメリカ軍の組織が何食わぬ顔で入って来た。彼女のプライドはずたずたにはなったけれど、戦後を生き抜く為には命があったことに感謝しないと、どんな対処にもならないのだ。タヤはそのしっぺ返しを食らったかに見えたが、実はタヤと嫁の共通的思考は数多かったと僕は見る。タヤにとって最も近いはずの嫁の思想は戦後というスケールでもう一回描き直され、そこにタヤが入っていなかっただけ。二人の仲はたいそう悪かったように想像するが、タヤは一回も嫁の悪口を言ったことがないそうだ。しかも義母にしかとを決行した嫁でさえ、タヤに一目は置いていた。ただ、時代の激流が、両者が仲良くなれる方向へは流れてはいなかった。タヤ自体はこう思っていたのでは?と僕は推察する。戦争は確かに間違っていたけれど、負けたことによって、日本人の美しい心や尊い伝統まで、木端微塵に壊れてしまった...と。