サファイア・マン《緻密な男編》〔190〕専業主婦に大きな難局が降りかかっているように見えはするものの、私の中ではごく自然に物事は推移していくだろうとの憶測でいたのです。なぜならあんなに出産を反対した夫や身内もやがて静かになって誰もが安産を乞い願うように変化していったのです。女性の決心がどれくらい素晴らしいものかを話すまでもなく、誰もが出産を回避することを奨めたこと自体を猛省するのです。この人間達の変化を見ながら、自分勝手な推測ではあるものの、女性の強さと周囲の弱さを思い知ります。誰もが気が付かない振りをしていただけで、私の決心は不動のものだと分かった途端、全員の心の中が無造作にそこに散らばってしまったかに見えて、考えるところ大だったのです。命の尊厳や子ども未来以上に何か得体の知れないものが家庭の中でさえ渦巻くのなら、母親ならいかに対処すれば?って。私には強行するしか手だてがなかったのです。普通ならとうの昔に銀行の健康保険証を取得しているはずが、このお腹の子供が初めての夫の健康保険証で産む子供だったのです。この感動は意味深な感動で、私はそれこそ短歌に詠むべき!!とそういっぱしに思っていたのです。しかし中々詠む機会は訪れません。身ふたつになるという安心がどれ程女性にとって大事なことか、身を持って知るのです。