サファイア・マン《面白い男編》〔188〕ペット葬祭というものを初に経験してようちゃんは自分がなぜ、そこまでこの猫の為に誠心誠意してあげなければならなかったか、直感で分かっていたのです。自分が留守中に子供達だけで留守番させていた時にこの事故は起こっていたのです。子供同士でとても辛い体験をしたのです。もはやその時の様子を訊くことすら出来ません。自分がいたなら絶対に起らなかったとまでは言えませんが、対処が頭に浮かばなかった子供達です。私は自分の傍に子供を置きながら何かに挑戦することの必至を知るのです。この方程式は絶対でした。子供達の誰かが怪我をするその見替わりになってくれた気がしていたのです。私は完璧な物書きになっても完ぺきな主婦にはなるまいとそう誓ったのです。もしも両方を完璧にこなそうとしたなら自分の寿命は圧縮されるだろう。そこまで未来が読めたのも子育てに敏感すぎて苦労していた母を見ていたからです。塵のひとつも許さないような潔癖症で、母は自分を傷つけるくらいに精神を消耗していたのです。どんな時にも微笑を浮かべておおらかに対処出来る器が母親には求められてはいますが全員はそのような温容な母にはなれないのです。自分は鈍感な器を持って生まれてきてしかも、それを活かせる資質をすでに授かっていたことを吉と想定するのです。