ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔99〕キャロルは新天地に矢上を選んでくれた両親に感謝します。誰も自分の過去を知るものはいない。当時まだ、鬩ぎを負っていたキャロル。罪悪感に戦く日々が続いていたし、どうすれば払拭出来るのか、罪が消えるのか・・・自分なりに考えていたのです。両親は子供の流儀に則って、相手に直で謝罪させるという形式を取らず、キャロルを庇い逃亡を選んだといっても過言ではなくその辺が昭和の家庭の持っていた親子プリズンだったかも?と分析するのです。本当なら、みんなの面前でその子供へ向けての謝罪をしなければいけないのに幼い事を盾に両親は新天地逃避行の権利を選んだ。その経緯を思うときキャロルはほろ苦いビターな感慨を禁じえない。恐らく父は自分が矢面に立って謝罪をしたのだろう・・・と。キャロルは新天地に来て自分の過去を知る者が皆無なことに安堵します。しかしもしも将来物書きの類になるのなら、そこは避けては通れない秘密基地になることはわかっていました。真実や隠蔽された裏話こそが生活ルポライターの元本です。いずれ年齢がいって大きな岐路に立たされ、自分のすべてを書こうという思いが弾け、語彙力もついてきたときに、この件にメスを入れるであろう自分を予期していました。