ブラックオニキス・マン135

 兄の結婚式のあと、長崎まで高速で僕らと戻ってファミリーマートでグーグルプレイの代金を入れてから家に帰るね!!って元気でさよならをして、早四十日。無事に代金を入れることが出来たのだろうか。なけなしの三千円を握り締め、僕らに言った。ごめんね。本来ならガソリン代としてもっとあげたいけど、このお金を入金しないとタブレットの写真が整理出来ない。じゃあ気を付けてね!!って別れたものの大事なことを僕は忘れていたことを後から思い出す。彼女と僕と母のスリーショットだ。それを母は気が付き、してくれる・・・ってどこかで勘違いしていたけど、母は孫を思い、すまほを家に置いたまま、結婚式に来ていた。僕が先導しないといけない場面だった。ボンネットを開けてクリームパンを渡したりする大事な時間もありすっかり忘れてしまっていた僕。彼女も同位と思う。一歩引く姿勢が社会人にはある。女性としても言えなかっただろう。タメ語で話すようなふつつかな彼女ではない。しかし母をおろしたあとの帰りの車中でまだ、ずっと、彼女は笑っていた。昔、せんべい布団っていう言葉があったことだ。母は自分の生活がだらしなくて、万年床にしていて、せんべい布団に寝てるのよ・・・って話したけど、僕らには全く理解出来ず、訊いたのだ。どんな布団のこと?って。アイロン掛けたみたいに堅いひんやりしたおふとんヨ。彼女は母を大好きになってしまう。こういうリアルをずけずけ話せる母親は世の中にはあまりいない。

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