ブラックオニキス・マン67

 僕はやっとこさ、母が自分の仕事の内容だけでなく輪郭に気が付いたことが家宝であり、果報だと思う。ずっと僕達が母によって描写されてきた歴史・・・。本当に母が自分の筆力を倍増しにする為に力を余分に持てたことは喜ぼう・・・しかしだ。やはり僕達子供等も健全に人生をまっとうしなければならない。今は相当に母もそこを配慮するようになって認めてもいいが、どうだろう。しかし父は全く違った観念で母にすべてを投げ出していた。僕達の態度とは乖離がある。父が山本五十六が亡くなった一週間後に生まれたことを説明するシーンを僕は見ていた。何がなんだか、全く分からない。小学生だったからだ。母は懸命にここに符合があるの・・・って。父は頷いてばかりで自分の意見を全く言わず、ほおおおって答えるのみ。まるで邪険に脇田大佐のことを父は扱い続けていたから、母に作戦があったのだろう。しかもね、1956年にあたし、生まれているのよね?って。父は、それは、偶然とはいえ、気になるな?って。僕は今なら理解が出来る。母は、山本五十六が出来なかったことに踏み込もうとしているんだな?っていう直感。しかし母はやろうと決めたことを反故にしたことがない。子供や主人そっちのけで踏ん張ってきた。その大成を僕らが封じることは出来ない。