デニム・ブルーママン14の4

f:id:hn0709:20220314130609j:plain 私が一番おっくうだったのは昼寝が出来ない月一回のその当日です。それは大体何時頃来るか?わかっていただけに難儀だったのです。汲み取りの為のバキュームカーです。ただ単に汲み取って帰ってくれればいいけど、最後はたらいに二杯の水を流さないといけなくて待っていてもその日は来なかったりで一日中心配でたまらないのです。容子はこの家のトイレだけが失敗作だったとかなり不満を漏らしていました。本当に底は深くて間違って下を覗こうものなら、落ちてしまいそう・・・私も、トイレと五右衛門風呂だけは苦手でした。たらいとはいっても、そんな小さなものではなく結構大きくて洗濯に使えそうなもの。バキュームカーが近所まできたときはすぐに分かる。独特のエンジン音と男の人達の声が聞こえてくる。長いホースが砂塵をあげて地面を掻い潜(くぐ)りながらそれは近付いてくる。男たちの接近する気配は掛け声のようでもあり職業的な会話でもあったのです。最初は居留守を使おうとしましたが、奥さーーん、奥さーーんと私が玄関に出ていくまで発声を止めない。終わるときに声をかけますからバケツに二杯くらい水を流してもらえますか?はい。核家族に収まってキレイに直し込まれた私がなんで、バキュームカーの係員と会話しないといけない?しかしこれを聞いた容子は飛び上がって喜ぶのです。たまたま早く帰って家にいたのか私に話しかける。お母さん、昼寝ばっかり出来ないことが起こるってのは想定外だったね!!ってニヤつくのです。