エメラルド・ウーマン33

 みんなが驚くかもしれないので黙っていましたが、これは容子には話した実話です。私は劣等感の塊だったのです。身長が低いだけではなく、姉や妹に比較して、裁縫技術や能力f:id:hn0709:20220123165158j:plainが低いと、母にしこたま叱られていたのです。昔は裁縫が出来ないと、皆の前で恥をかかされる。私の母ですから言われようとも、そこまで気にすることはないのですが私は嫌でした。人並みない…とそう取ったのです。今は何でもかんでもプラス思考で行こうとの風潮はありますが、昔の日本人は常に最悪の場合を想定し、備えたものです。和裁に於いては私は、姉はおろか、10歳下の妹にすら及ばない。この現実は簡単に撃ち崩せるものではなく、劣等感として、いつしか、私の心に間借りするようになって行くのです。