アクアマリン・マン161

 容子は恐らく腰を据えてこの宝石シリーズ、ブリッバーを完成させるだろう。きっかけがあの新作映画だった。九人の翻訳家が出てくる。囚われたベストセラーという映画。映像には九人の監禁された翻訳家が出てきて、そのたび人数を数える容子がいとおしくなった。あの翻訳家の弁だ。女性で家庭を持っていたのだろう。若くはない。自分は家族を犠牲にしてまで踏ん張って書いてきた・・・そしてようやく作家になれるかなって思って何度もチャンスがあったけど、結局は、翻訳家にしか、なれなかった!!どうしてくれるのよ?自分に怒っていて、人様にもあたっている。いわゆる切れ捲っている。その時の容子の気持ちが僕に以心伝心され聞こえてきたのでしたためておこう。これは非常に重大な発見でもある。容子はこう思っている。あの女性の弁を聞く前・・・翻訳家って凄いわ!!なりたいと思っても語彙に堪能でなければなれない・・・って。しかしあの女性の弁を聞いてから変容を余儀なくする。あたしは、幸運だったかも。翻訳家にもなれない自分がここまで来れた道のり・・・これこそが奇跡〔ミラクルバー〕なのでは?って。僕はことの他、嬉しかった。生きている時もこのことには気が付けないでいた。しかしながら、僕がそうでも、容子なら、気が付いても良さそうではあるが、彼女が結構、鈍感な部位を持っていることで効能は芽生える。学識を全く得ないまま、作家になれるなど、夢のまた夢であったろう。