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 茶道教室で最初に見た時の美知の印象。すこぶる女性らしさを感じた。これが第一印象。しかし話していく内、親しくなるうち、彼女の心にはマグマがあってその激しさが幾分、対話するとき、億劫に思えた私。なぜなら美知が芸術の探究者だったのに比べて自分が茶道教室に来たのは母からの奨め。大きな意図も向上心も別段私にはなかった。それに反して美知の知識や茶道熱、そして短歌への熱い思い。辟易とした・・・とまでは言うと可哀想だけど、私には常識と言える精神がその頃からあったのは事実です。芸術を司ることが出来るのはごくごく少数で、そんな・・・庶民が安易に語るべきものではないっていう本来の封建的な考え。しかしある程度理解は出来る。時代は少しずつではあるものの確実に、アメリカンに足並みを揃えつつあったから。日本本来のいいものを少しでも維持する為にも、短歌がいいのは頭で分かっていた。しかも同じ名前だったこと。私がミチ子で、あちらが美知。偶然だろう。それにしてもこんなことが実際起こるんだなって。気にならないといえば嘘になる。あちらは私より二歳下。容子の父親になる兄より学年でいうと九歳も下だった。年がそれだけ違う。美知が兄を思う気持ちの度合にもそこが表れていたのです。