Ss320

 自分より不幸な境遇の人間を見て安心を得る癖?そういう嫌なものを貧困層は持っている。それはしかし仕方ないなって思える。毎日が闘争なのだ。サバイバルにある貧困層にとって、いい加減にせんかい!!っていう位、娑婆の風は冷たい。しかし僕は姉に話を聞きなんかこう僕でさえ不安に駆られる。義兄が急に病が完治して、この前預けた通帳とキャッシュカードと印鑑を全部返してくれ!!って言われないかとても不安だという。しかし義兄はそんなにちっちゃな人間だろうか?まだ、姉は義兄を本当に信頼するまで至ってはいないのでは?って僕はちょっと残念に思う。心血を注ぎ介護している人間がそんな事にまで及んで、心配するだろうか。義兄は本当に心を入れ替えて姉にすべての財産を預けた。しか~し、へそくりというものの脆弱さも僕は思わずにいられない。僕は法的に両親の代理権を獲ったが姉は言葉で獲得したという稀な事例。相手をじわじわ真綿で締めるように日々説得していく方法。僕の方がかなりリーゾナブルで法律に則っている。自慢ではないが姉が疑心暗鬼になっているのならそこも僕にとって興味しんしん。美味なる部位だろう。説得に段々応じていく人間の恐怖や、その心裏のきめ細やかな移り変わりの描写なら松本清張だろう。彼を超える小説家は日本にはまだ存在しない。