yd1029

 まさか、自分の父に教えて貰えるなんて感動以外の何物でもなく僕は覚醒した。お客が自分のカードをまず置く場所・・・。Tポイントカードは浸透していてそれを持つ顧客がまず小銭を置く皿に自分のTポイントカードを置く。それがないなら手渡しも多い。この皿をなんて言うか?呼称が分かったのだ。僕がレジが混雑した時にいちいち札を直し込む時間がないってそういう話を親父にしたら、かんかんに怒って時間がかかってもいい・・・ひとりひとりの顧客の精算を完全に丁寧に終わらせる動作でいないと失敗するぞ?っていなされる。しかし・・・僕も猛攻する。そんなこと、いちいちしてたらスピードが遅くなるって。親父はお金を扱う時の慎重さをこんこんと僕に説教する。間違えた時、一番顧客は怒るはすだ・・・スピードは二の次のはずだぞ?って。万札や五千円札は最後まで顧客の見える場所に提示。そうすることでミスはほぼ防衛出来る。小銭は?って僕は尋ねる。ああ、小銭はちゃんとカルトンから自分の手ですくい上げて数を緻密に計算しながら顧客と確認する。カルトン??ああ、そう呼ぶ。ぼ、僕はその呼び名さえも知らなかったんだ!!って言うと親父は苦笑い。そして鬼の首を獲ったみたいに父は笑顔になる。僕は一歩前へ前進したように思う。僕らにとって最も身近な皿の名前がわかったことは大きかった。