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 信じられるものとは何だろう。僕は家族の中で愛されてすくすく育った。一番目の衝撃はやはり姉の家出だった。幾ら何でも家族に黙って消える・・・まだ、中学一年生だった僕は心底心配し、なぜ、連絡なしで出て行ったか?中学生なりに考えた。好きになった相手を親が認めなかったという経緯を聞かされる。そのことを僕は知って姉のワガママさを嫌と言う程味わう。でも心配な気持ちの方が上回ってどうにも対処が出来ない。姉は半年後には連絡をして来たがそれまで家族がどんな気持ちで生活していたのか?そこまで考えていたのだろうか?怒りに似たものも僕には芽生えていた。もしも普通なら両親の言うことにも耳を傾けて、善処もありうる場面ではなかろうか?反対する理由を全部消していく努力も大方しなかったのでは?と僕は勝手だが想像する。姉の家出がなければ僕はもっと人生で姉を評価したと思う。思春期の僕をどん底まで落としめたこの事件をただ単に人を好きになって駆け落ちしたのよね?って言って済ませるほど軽くない。いつも常に姉はお手本だった。しかも帰って来た時もあっけらかんだった。心配かけてごめんね?だけでは僕の失意のどん底は元通りにはならない。人の気持ちがわかってない・・・こういう深い洞察を僕は姉に対して持っている。もしも知らない人がいたら危険だ。注意喚起しておきたい位破天荒なのだ。