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 別に墓の中に埋葬しないでも骨壺の中で十分と姉は思っている。何しろ墓まで行くには角度六十度以上の坂道を登り切らないといけない。以前は車で行けたのに周辺が私有地になって、和田家の墓へは徒歩でしか行けなくなって久しい。姉も観念したのだろう。もしもあそこで倒れても誰も見つけてくれはしない。それくらい人の気配はないと感じる。角度というのは有無を言わせない。もしもこれが長さを競う坂なら、姉も喜んで参戦しただろう。しかしもうちょっとで墓が見えるって言う時、姉は鼓動が苦しくなる。悪感もして吐き気も催す。これは心臓に相当に負担が架かっているな?はすぐさまキャッチ出来た。あれから姉は墓には行っていない。酷く、親不幸のようだが、これはご先祖さまも致し方あるまい!!って我慢してくれると僕も思う。後世に生きる者達には、やはり、長生きして欲しいはあるのだ。そして、精一杯才能を開花させて世の中に貢献して欲しい。それを恐らく先祖は祈っている。骨壺のある仏壇で兄は毎日こう思っていることだろう。うだつのあがらない女房を持って幸せだったかもしれないな・・・。なぜなら僕の年金の半分は受給出来ている!!そこで感謝の気持ちはストレートに仏壇の僕に向かって来る。ありがとう!!って。偶数月の十五日だけでも感謝されれば義兄がそれ以上望むことはない。