Ss197

 脇田大佐の一人息子が母の兄になる脇田正昭氏だ。彼のように弁論の闊達な人物を僕はかつて見たことがない。母が兄としてそして人間として敬愛したのも分かる。豪放ライラクっていう男のカッコ良さに対峙する別の形のカッコ良さで僕も随分憧れたものだった。スリーSエリートという言葉がぴったりくる。スマート、スマイル、ステータスの三つのSが揃う。僕の父はずんぐりむっくりで、出来もしないことばかりを執拗に追及する理想家。それとは真逆の知識優先ダンディな伯父の姿にぞっこんになった。しかし僕がまだ小学生だったこともあって、相手がどんな内容をうちに来て話したかそこまでは覚えてない。ただ、学校からまっすぐ家に帰って来て良かったなと興奮したことを覚えている。忙しい伯父だった。陸上自衛隊はそれから僕の憧れになっていくが全くのマザコン男の僕は、母を置いて家を出ることをやはり最後躊躇する。心が整っているのに身体がストップを掛けてくる。人生と母・・・どっちも僕にとっては均衡が取れてしたし、母を大事にするような路線でないと駄目なことは最初から分かっていた。今・・・母を12年介護して良かったとそう思う。今全く年金もゼロ状態だけど心に恨いを残さなかった。母とお世辞は無縁で最期までクールだった。マンションを買いたいと姉が無心して来た時にも、うまいこと断っている。姉の正体こそ銭の亡者ではないか?これは僕の想像の範疇だが・・・。