Ss172

 大富豪の気持ちも極貧の気持ちも同時体験した僕にだけ分かることはある。僕は大枚を握っている時には自転車なんかに目を向けたこともなくそこはシビアだ。皆は富裕層にも自転車派は居ると言うだろう。しかしそれは生まれてこの方、常に豊かだった連中だ。僕のような一攫千金タイプは何がどうなったか全く分からず、これは正夢・・・それも白昼夢?と我が頬を抓ったものだった。僕は母にすぐに通帳を見つけたことを話すが父には黙っていた。僕が言わずともすぐ気が付いてそこが滑稽だった。通帳と印鑑を持っている者が最も強いのに父はどういう訳かその貯金は僕のものだ!!を一点張り。そこで裁判に突入する。僕はそういう父のけつの穴のこまさが大嫌いだった。ああ、その預金ならかあちゃんのものさ!!って言えば僕も父を見直した。父は自分の妻をかあちゃんと呼称。せっせと父から貰った食費を貯めていた母の根気強さ・・・。それを我がものだ!!と抜け抜けという父に僕は人生もらった!!を痛感したのだ。僕はすぐに新車ワゴンR特別車を購入、車椅子仕様の母へ贈る大切な送迎車だ。僕は別にあった父の土地を僕名義にしてもらったばかりで新築二階建を母の貯金で建てる。僕自体、大工に入り家を完成させるが、母を一週間しか引き取れなかった。母を抱えて移動の時にいきなり腰を痛める。70キロ超ある体重のことを度外視していた。施設にすぐさま入れた僕に非難轟々の姉だったが、姉自身が最近腰を痛めて初めてその辛さを悟った模様だ。