サファイア・マン《かけがいのない男編》〔171〕伯母は一度結婚し死産した後、昭和四十五年の四十九歳まで独身で過ごし、その後、三菱勤務の男性と再婚し、十九年間のその伴侶との生活も終わりに来ていました。次女が三歳の誕生日を迎えるかという頃、亡くなられ、そのお葬式も今は遠慮するように伯母に指南されるのです。親子六人、まだ、幼い子供もいる、寒さも将軍級の二月ということで、春になって我が家に訪ねてきてお参りして欲しい!!って諫言されます。春になってという言葉にようちゃんは何かが悲鳴を上げたことを痛感するのです。その頃の総負債額は今思い出しても心臓に悪いし、ああいう正念場っていうか修羅場をしかし、くぐり抜けて来た人生の幸運を思います。伯母に電話では言えないからその時が金額明細を話すチャンス!!そうは思っても、気が引けるのです。彼女の、盤石を基礎とする人生術にはちっとも耳を貸さなかったその事実が痛ましく、もしも、彼女が言う通りに足並みを揃えて来ているのなら、あそこまでの惨状にはなってはいなかった。どっちにしてもシゲルちゃんの耳に入らない訳がなく、ようちゃんの心はたちどころに暗くなる。しかし、人に取り入る術を会得していた事が後に功を奏じる結果になるのです。