サファイア・マン《かけがいのない男編》〔118〕いくら再婚同士の結婚や片方が再婚っていうケースが増えたからといってキャロルの結婚をみんなが参考にしたらどえらいことになります。キャロルには運があったからです。それを実際三十一歳になったばっかりの自分にはしっかり把握出来ず、ただ、待遇の悪さを嘆いていた。どう考えても煮え切らない彼の態度が憎たらしくて、それを考えない日はほぼ皆無だったのです。しかしいつもエレベーターで出遭う美しい女性に声を掛けられて、生命保険の話に及び、最初は会釈だけをする間柄でしたが、年齢お互いに近いこともあり話ている内に、こっちが新婚さんだとわかったのか、いつか勧められるようになるのです。女優さんみたいにスタイルも完璧でキャロルは生命保険というものを身近に置くのです。それまでは加入は一回だけありました。なんとその三年前恋人が入ってくれたときです。結婚を約束していましたが彼はある日突然いなくなったのです。そういう事情もあってか保険会社の人と知り合うことが運命のように感じて彼女の話に聞き入ってしまうのです。そういえば自分には何の保障もなかった・・・なんていう落ち度だろう。夫が亡くなったときに自分には妻としてちゃんと籍に入っている以上は預金などなにがしかはあるだろうけれど、しかし決定的なものは必要との見解に立つのです。彼女の勧誘には安直ではない人生の手引きがあったのです。