ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔67〕父は台湾の高尾警備隊にいて、終戦時はキールン防備隊にいたと・・・。敗戦が決定して父が帰国するまで、凡そ七ヶ月。何をしていたの?と尋ねると、ひたすら土地を開墾していたと言うのです。お風呂は焼却用でよく見かけたあの円筒のドラム缶って奴。それに湯を入れて順番に入っていたそうです。台湾人が中国人に内緒で、こっそりバナナの差し入れ。それがとても美味しくて嬉しかったと。父は、マラリアに罹っていなければもっと早く復員出来たんだとそう言いました。でも今になって思うのは、台湾で終戦があって、命からがら、生き延びることが出来たという果報です。槙という名前の船で鹿児島の港に着いて父はとにかく汽車を乗り継ぎ、徒歩で歩いて、どうにかこうにか喜々津駅に着くんです。もう本土に着いて何日か経っています。ここからが父の強運なところ。その喜々津駅で、ばったり酒屋の従弟に会うのです。どうしとったかと思うとったばい!生きとったとね~みんなは??みんな、もう死んだと思うとるばい、おうちが、生きとると知ったらどがん歓ぶか、お母さんのタヤさんが・・・。良かった・・・と父は思います。とにもかくにもおいのおにぎりば渡すけん、ここでまず座って食べんね?父はかぶりつきます。美味しい・・・こんなに美味しいと思ったことはかつてなかった・・・と。従弟は商売柄、車を回して来ていました。送り届けるけん、安心しとかんばよ!!濱田家ゆかりの人物でした。父はそういった大切なことを、友垣という仲間で作った同人誌にも書いていません。キャロルはまだまだ、父の言葉を記録しなければと思っています。