ルビー・ウーマン《黎明編》〔61〕将来をこれ程、嘱望された人間がかつてニッポンにいただろうか、大佐?いいえ、今のところはありません。容子がすべての記録を塗り替える。そして人類の座表をも・・・。かいかぶりはよくありません、まだ、完全な人格になりえてはいない容子ですから。いいやそこが面白いと僕は思う。完全な人間など地球界にはいない、イエス・キリストマザー・テレサ?どちらも悩める人間だった。キリストに至っては、自分の弟子達に裏切られ壮絶な死を遂げた。だから・・・容子には弟子もいなければ大元もいない、そういうシクミにしたのも神の配慮だ。しかし、完璧に少しでも近付こうとするのが、思慮ある人間の姿ではないのですか?そういう点で容子にはまだ、未熟さがあると・・・。僕は反対意見だ。容子は自分の直感で勝つ方を選ぶし、その純粋な眼差しにこそ、この国の将来が宿るとそう理解する。そうですか、神々直伝がそうなのなら私も従うことに異存はありません。あの子は確かに純粋にサクセスを求めています。その雄雄しい眼光が私も事実羨ましいのです。国を背負うとか、日の丸を背負うというより、自分が勝てば日の丸が追い駆けて来るという鼻息こそが、勝ちの構図です。脇田大佐、君はなぜ?そうも成長したのだ、レイテの戦いの時とはまるで違う!そもそも勝ちに行くことが判ってきたのではないのか?この娘を見ていたら、自然とそのような気持ちになっていったのです。そういう不思議なえもいわれぬ気持ちが自分でもわからないんですが・・・。それでいいのだ。