サファイア・マン《緻密な男編》〔5〕そして・・・このクラブのオーナーが不世出の人物であったというお墨付きが付くんですね。こういう人物と出会えるという事、それ自体運が良かったといえるでしょう。もちろん入店して来たキャロルに眼もくれません。店内の美女たちと比べれば、美女とヤジュウ。それも台所から来た野獣ですから煮ても焼いても食えない。その辺をよくわかっていてキャロルを上得意客のテーブルに呼ぶことは盆と正月くらい。つまりそれらは休店日ですから皆無だった。しかし、ある時に呼ばなければいけないような状況に追い込まれる。顧客の呼び出しで指名でした。その方は、実に清楚だとキャロルを一目惚れ。しかも経済同友会のメンバー。このメンバーからけちょんけちょんに揶揄されるのです。あゆみちゃんのように頑張っている健気な女の子を社長は少しは認めてあげてよ、僕が居る時には少なくとも指名してよ、まさか、あゆみちゃんをいじめてなんかいないだろうね?め、滅相もございません!と答えながらオーナーも気が気ではない。すぐ、あゆみテーブル付けて!と番頭ボーイを呼びます。なんでこうあんな台所から出てきた子持ちの女をみんなが重宝するのかが、いまいちオーナーはわかりません。ひとつ、教えてくださいよ、あゆみちゃんのどこがそんなにいいかを?オーナーは学びの精神にたけていました。どこが?っていうか全部だろ?ここにいる女の子達全員とは違う何かがあるんだよ・・・。オーナーは厄介なことは大嫌いでした。ごゆっくりなさって下さいと言い残してテーブルを去ります。一体なんなんだ?美形でもないあゆみが昭和6生まれの年代の同友会メンバー達からこれ程人気者になるとは・・・オーナーは訝るのが先でした。