ルビー・ウーマン《黎明編》〔6〕自分の中に、立て直す力があったから、戦後民主主義にかろうじて、染まることが出来たのか、それとも、母の中で、軍国主義は滅びていなかったの、どちらかと言えば、明らかに後者でしょう。あの玉音放送が、リセットとなり、ゲームよりも早い速度で、この国が、寝返りを打った時に、シビアな視線を持ちえたのは、幸運だったと分析するんです。そういう、寝返りを打たざるを得なかった、要因は軍人にあったからです。陸海、総ざらえで、消滅した時に、憔悴の中に一縷の望みがありました。大正ロマンを引き継ぐ芸術の台頭が、銀幕でも盛んだったのです。母の理想は池部良さん・・・。しかし、そういう美男子が、この界隈にいるわけがありません。しかも父は、教職員のストなど、けしからんと、そればかりを追及している。少なくとも、争いごとは、二度とゴメンだ!!といった傾向が母にはあった。しかも、ダンスホールでの、父の態度は母をげんなりさせました。ルンバ基本ステップすら、押さえ切れなかった。ちびちびグラスを舐めるように、隅っこのテーブルで、辺りを気にしながら飲む仕草・・・。快男子ではないし、ましてや日本男子ではないと。