おこぼれを、もらうってこと、それは、恥ずかしい?なことないよ。別に、その日、必ず誕生日でなくっても、一ヶ月前に出来なかった、パーティをここでやってるって思えばね。そういうおこぼれに、キャロは目敏かった。誕生日、実はね、ぶっちゃけ、今日誰かさんのバースデイなんだ。キャロが二回目、逃げられた、男性の。だからなおさら、ピッチが早いんだ。日商岩井っていう会社の商社マンで、剣道二段をいつも自慢していたんだ。キャロより、六個上。神戸三宮の時計屋の三男なんだ。長崎に来たお兄様にもお会いした。でもお父様は早くに亡くなったらしいんだ。キャロは彼の転勤について何も知らされてはいなかったんだ。忘れもしない、いつものように、アパートに朝行くと、おかしいんだ・・・。すべて、品物はあるんだ。家具も・・・。それでも、脳天直撃がゴーンとあったんだ。そういえば、前の晩、キスする時に、彼、涙を流していたんだ!!それを、なんでかな、っていうくらいにしか、思っていなかった自分の落ち度。涙って、そう簡単には出て来ない。つまり、キャロは、嵌められたんだ。転勤を言えば、追随されるし、もっとも、一緒に連れて行くって、東京には、二人で行こうね!!っていう段取りだったんだ。空っぽの部屋で、キャロはものの五分で、裏切られたことを悟ったんだ。蛍光箇所ね。この世の中で最も愛する人からの裏切り程、目が覚めるということ、事実、他にはない。バケツ一杯の水をかけられた、言わば、ぶっかけ人間状態である。