デニム・ブルーママン18の4

最初こそ、一定の時刻を設けていたものの、もっと早い時間の店の様子を探りたい気持ちになって四時ころにお邪魔して、新聞作業の内訳をみずから知りたい容子でした。しかし速く出る分仕事は速く済む。それを思うと私はそこまで心配はしていません。とにかく遊ぶことが大好きで、小学校時代もあちこち遊びに出掛けていますから地元地理には詳しい。そんな容子でも知らない、清藤(せいとう)の深い場所まで行くとき、道の分からない人生より、道を極めた人生がより有利であることを悟ったようで、ひとつひとつの家の表札も大事で、それがあるからこそ、確認も出来て新聞の専用ポストも当時あった。ここに入れてください!!っていう意味が伝わって嬉しかった容子です。なかには、お疲れ様・・・と記されたポストはあって、言葉によって本当にねぎらわれている自分のこころを確かめてそこで相通じるものを共有していることにはっとするのです。いつもありがとう・・という言葉もありました。新聞は各家庭に根付いているんだなっていう悟りがあったことで、そのあとの人生をさらに新聞志向にしていったことは否めない。読者があってこその新聞。庶民の手のうちにある新聞だからこそ、繁栄も約束されている。友達にも先生にも言わず、黙々と作業をする容子に、私は別の人格を見ているようで不思議さもあった。本来は創作の仕事がメーンであるはずが、学校の復習云々よりも実際の行動を重んじた姿。好きなことに打ち込むためにもこの配達は必須だったのでしょう。人は、もっと勉学が大事だろ?ってアドバイスも受けながら、それでも配達には意味がある・・・を言い続けた容子、自分の将来に確実に噛んでくることを予感していたのです。夫は元々新聞好きではありましたが、朝日は嫌っていました。我が家はずっと長崎新聞でしたが、容子に勧誘を受けて配達している間は取って読んでみることにしたのです。