アクアマリン・マン11

 ヒッチコックの人生を特集した番組で僕は偉大な発見をする。彼が一時期、低予算でヒットを出そうと狙いを定めたことだ。サイコがそれだ。僕は容子の頭の中が見える。彼女はヒッチコックのことは横に置いて頭の中では大変なことが起こっていた。なんと雹(ひょう)が叩きつけられ雷鳴もグワゥンと唸っている。なんと、娘が掃除をしている。ここ何年もそういう姿を見たことがなかったので感動のるつぼに巻き込まれる。涙もうっすらと滲む。僕はヒッチコックの名前に既にhitのスペルがあることにハっとする。倹約の家庭を作ることと、低予算で大作映画を作ること、この両者はかなり似ている。