Ss139

 僕ほど様々な職業を頭に描き、働かなかった人間はいない。想像上では僕は幾つもの企業で働き、そこそこ収入も稼ぐ。しかしこれは全部想像上のことなのだ。考えることでほぼ一日を費やする僕もいつかは死んでいく。その時のことも最近は考える。無縁仏として処分される自分のみすぼらしい最期を看取ってくれる人もいない。僕はそういう孤独を自分から進んで選び満喫したわけではない。僕にだって人に語りたい夢はあったし、どんなことだって可能!!ってそう感じた三十代はあった。人物伝を読むと恐ろしい現実にぶつかる。偉人と呼ばれる人々のほぼ全部は幼い頃から頭角を現し、それがない場合でも特別なきっかけを掴んで立身出世を我がものとしている。自分の殻に閉じ籠ったままで、人々の前に突然現れる人はいなかった。僕は本が好きで図書館に通っている。そこで目にするすべては新鮮で僕の心は研ぎ澄まされていく思いだ。今日も命があって、何もしていない僕に向かって、世間が何も言えないように、僕は殻を破らない。その方が過ごし易いからだ。きっと今が旬の僕かもしれない。この環境ならばすべてを吐き出せる。胃の中に何も残さず酔っぱらいが吐いて地面に倒れ込むように僕は自分を解放する。このことが、禍転じて福と成すように思えるからだ。