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 僕はある文言を見て驚く。白髪になって大抵の人はまず白髪染めを心に思い立つものだが、そのセンテンスには”染めない勇気”とあるのだ。こんな言い方をされると僕も迷う。これまでは染めることが女性のみならず、男性にとってもエチケットだとそう踏まえてきた。それなのに、自分の老いにきちんと対峙してしかも自然体であり続ける心の用意とありよう。なんという今までとは違う捉え方だろうか。確かにキングカズも染めてない。自然なシルバーを受け止めている。そこを理解すると、見えて来るものがあって、キングの意味がここに凝縮されているのでは?と僕は推察する。自分の年齢を受け止めている人々は、それなりの人には見えない努力を積んで今日ある。そこが素人にはわかりにくい点かもしれない。老いや年齢のなすがままになることと、自然に来ている老いに対してそれを素直に受け止められる姿勢とは違う。キングカズという五文字に内包されてあるのはその極意。僕はキングを付けて友達のヤスという男にキングヤスというニックネームを付けて呼ぶ。これには、いい意味があるのだ。キングカズのようになるにはまだまだ年数が必要なヤスではあるが、キングヤスと呼べば彼は舞い上がる。この瞬間彼は彼に出来なかったことにすら着手しようとする。この効能に僕は僭越ながら気が付く。キングヤスとそう呼ばれることで彼は持っていなかった力さえ出してしまう。まか不思議な言葉の力である。