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 僕は昨日、はたと考え込む。最近購入した一万円ポッキリの座椅子がくるくる回転するのに輪を掛けて、畳から五センチ以上、上がっていることでサイコーの気持ちにいざなわれる。こんなに優れた安い商品を置くナフコツーワンスタイルに驚きを隠せないのだが、ひとつ自分自身で思う処があって、小さい頃、海の中で浮輪にお尻だけ入れて、海の上で浮かんでいた時の爽快感を思い出していた。あの時は、両手両足は浮き輪の外に出していて、お尻だけを浮き輪に入れて浮いていたのだが、なんでそこまで安定感があったのか、この座イスは素晴らしいけど、段々下にずり下がって来て、どうも時間が経過するごと、椅子の奥に腰かけ直さないといけなくて、僕はあの浮き輪の原理を活用した座イスが出て来ても全然おかしくはないなあって制作熱を熱くして考案したのだ。要するに難儀なのは段々前にずり落ちて来るという物理的な傾き。あの浮き輪に腰を埋めたように浮き輪にお尻をすっぽり入れた座イス構造にしてしまえばいいのだ。それによって足が高くなって炬燵に引っかかってしまうが、炬燵の足を長くすれば問題ない。僕は座イスが進化するだけで、お年寄りの空間はより健全になるとそこを痛感してやまない。あくまでも炬燵とセットで考えないといけない。下半身が冷えるのを老人は好まないからだ。人生百年の時代に対応する、悠悠と海を浮遊する泳ぐ座椅子スタイルは、きっと近近、幕を開けるだろう。