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 生涯獲得年俸という計算で行けば私の年俸なんて地球上で最下位でしょう。しかし仕事の領分や実績を問われれば、私は上位に付けているを自覚します。今までの金銭感覚は常にこうでした。いい仕事にはいい昇給といいノルマが与えられる、そして何よりもいい仕事にはいい年俸は付くと...。しかし実際はそうではないことも認識するのです。いい昇給やノルマは組織人にしか付かない。そして年俸も同位です。組織人ではない私達はやはり自分自身の眼力を頼りに極めていかないといけない昨今。だとすれば29歳になって私が考えていたことも今とそう変わらないのです。物をしたためていくことは誰かが得をするとか利益を得る以外に効果があることを言うのです。自分自身はいっこうに、うだつが上がらなくとも、それを良しとする考えが日本にはある。いつもお金に困ってあたふたするのではなく、落ち着いて人間として物書きが出来る環境を私は探し求めていたのです。それが叶うのは、負債をゼロにしてからだろうって。そこまでは解ってはいるけど、どうしても具体的な行動が浮かんで来ないのです。私は、支配人に借金が一杯あることを相談します。それがオーナーの耳元に届くことを願って、みずから相談します。支配人はきっと私を身の程知らずだと一度は思ったかもしれません。個人的なそういう相談は余りしないで、遠慮して隠すのが女性の品格と流儀でもあったからです。