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 今の若者のソッコーセンスにも驚きを隠せない。極上の極上なんかを把握済みなだけでなく、店内の家具の配置も内装も様子も雰囲気も逐一知っていて、僕など後手に回る方だを自覚する。僕たちが持っている食の知識や作法を超えて、店が数々指南を解禁してくれる。こっちは聞いているだけですべてがわかるシステム。店もその方が後々助かる。美味しいものに目がない人生を歩んでいれば間違いもない。うどんが好きな者同士のカップルなら話が頓挫することはなく、イタリアンとフレンチを使い分ける兵なら喧嘩しても一瞬で冗談にすり替える。こういう器用なさい配のもとに様々なバラエティ力をふんだんに駆使して、今日あるのが日本の飲食業の実の姿。もしもプロポーズに適した店を調べようものならそれは次々出て来る。四つあったとしてその中からダントツのものを自分でチョイスすればプロポーズも上手くいく。新婚旅行と指輪の調達も必要だが、僕は結婚しないと決めていた自分をもう一回、揺さぶり起こしてみるのも価値があるとそう睨む。もしも結婚しないままなら、入院した時に、やもめ以上の難儀に見舞われる。下着や寝巻を誰が洗濯して持って来てくれるのだろう。そういう代行サービスをまだ見たことがない。入院という崖っぷちに置かれて初めて、人の世の決まりごとに開眼する。しかしその時では遅きに失し....。自由人である独身貴族も、剣山に刺された薔薇の茎さながらの痛みを、絶えず抱えているのだろう。